世界を知って、
世界が視野に
活動の“輪”を広げていきたい

第18期 研修派遣生
愛知教育大学 教育学部 准教授
1999年、個人研修でイギリスへ留学。
バーミンガム大学や英国盲人協会にて、一般の人たちの障がい理解をテーマに研修。
帰国後は、筑波大学障害学生支援室の助教を経て、愛知教育大学に勤務。また、ダスキン障害者リーダー育成海外研修派遣事業の実行委員も務められています。


公益財団法人 ダスキン愛の輪基金
ダスキン愛の輪基金は、障がいのある人もない人も心豊かに暮らせる「共生社会」の実現をめざして、株式会社ダスキンとダスキンのフランチャイズ加盟店が支援して設立されました。ミスタードーナツの店頭などでの募金をはじめ、皆様からの寄付、会員の皆様からの会費によって、設立より40年以上続いている社会貢献活動です。
インタビュー動画
憧れだった留学が現実のものに
Q
ダスキン愛の輪基金の研修に応募されたきっかけを教えてください。
私が海外研修へ行ったのは大学院生の時でした。もともと英語が好きだったものの海外の方とお話をする機会はあまりなく、自分の英語がきちんと通じるのかなという好奇心もあって留学への憧れが大きかったです。
目の見えない一人の大学院生として海外の都市に身を置き、公的な支援サービスを受けたり地域の人達の手助けを受けたりしながら暮らし、教育や福祉の考え方・実態を日本とイギリスで比較してみたいと思い応募しました。
Q
渡航に向けて愛の輪基金から何かサポートはあったのでしょうか。
ダスキン愛の輪基金のアドバイザーの先生と研修先を話し合ったり、事務局の方に手続きを手伝っていただいたりといろいろサポートいただきました。
刺激いっぱいの日々で
思考もメンタルも成長
Q
現地ではどのような生活をされていたのでしょうか。
受け入れ先の大学から海外留学生を対象にした寮を紹介してもらい、そこで暮らしました。寮には日本人やアジアの国から来た留学生もたくさんいました。いろいろな国の人と友達になれたことが楽しかったですし、さまざまな志で海外留学にチャレンジしている日本人からの刺激も大きかったです。
Q
たくさんの交流があったんですね。
そうですね。私一人だと行ける範囲も限られてしまいますが、目の見える友達とたくさん知り合ったので遊びにも行きました。あと私はハンドベルを中学・高校の部活でやっていたんですが、クリスチャンの楽器なのでイギリスやアメリカですごく盛んなんです。なのでイギリスで市民サークルに入ってみたいと思い、自分でメールを送って入れてもらったのも楽しい思い出です。
Q
現地で学ばれたことを教えてください。
視覚障がいを持つ人への福祉や教育などを学びました。日本もイギリスも視覚障がい者の数はそんなに多くないのですが、支援があればそのぶん生活は豊かになり教育の質も上がります。そのためにサービス充実を目指して頑張ってくれているというやり方や中身は、意外とイギリスも日本も同じなんだと感じました。
Q
留学で得た一番大きなものは何だったのでしょうか。
やはり「広い視野」と「価値観」でしょうか。例えば多様性とか共生社会とか、今はそういう言葉が頻繁に使われていますよね。口で言うことは簡単だけれど、自分自身が当たり前のこととしてそれを実行していくことに、戸惑いやためらいがなくなったように思います。
あとはメンタル面でもです。目が見えない状態での海外一人暮らしだったので、例えば研修先と寮の往復も自分でできるよう英語の歩行指導を受けました。それ以外にも身振り手振りが分からないので、英語だけでコミュニケーションをしっかり取りながら頑張りました。一年間なんとか暮らすことができ、それなりに深いコミュニケーションが取れたという自信と喜びがありました。
海外研修が今の「私」の土台に
Q
帰国してから今に至るまでの経緯を教えてください。
大学院を修了後、筑波大学内の障がいのある学生を支援するセンターでスタッフとして仕事を始めました。ただ私がもっとしたかったことは視覚障がい教育なので、それができるところを探して就職活動を続けていました。そんな中、愛知教育大学で東海地方で初めて学部の学生に視覚障がい教育領域の教員免許を出すことになり、教員の募集がかかったのでそれに応募しました。働き始めてちょうど11年が経ちました。
Q
現在のお仕事で海外研修の経験を生かせていることはありますか。
海外研修をしたことでいろいろな面で勇気を得ることができ、自身が頼もしくなったと思います。英語や外国人に対する戸惑い・壁などが少しはなくなりましたし、そういう経験を土台としながら世界を視野に入れた研究活動・教育活動をしなければと自然と思えるようになりました。
イギリスでも感じましたが、視覚障がい教育はそれを受けている子どもたちもサービスを提供している教員も大変少ないフィールド。教育力や研究力を高めるためには、日本にとどまらず世界を視野に入れて情報共有や情報発信をしていかないといけないですしね。
支援のバトンを
次世代につなげたい!
Q
研修当時と現在を比べて、日本の福祉はどれくらい成長したとお感じでしょうか。
視覚障がいの分野は“情報障がい”と言われるので「ICT(情報通信技術)」の進歩はやはりありがたいです。その反面、世の中の目覚ましい進歩に私たち目が見えない・見えにくい人たちが取り残されてしまう側面も少なからずあるので……。そんな課題に立ち向かえるような子どもたちを育てていくのが教員の仕事ですし、その教員を育てていく私の役割も大きいんだろうと思います。
Q
今後を担う次世代の人に向けてメッセージをお願いします。
私はダスキン愛の輪基金の支援を受けて、本当に充実した留学生活を送ることができ、その経験をもとに今があると思っています。若い世代のみなさんも、まずは自分のことを大好きになって自信を持って新しいことにチャレンジしてほしいし、そこで得たことをしっかり噛み砕いて次のステップにつなげてほしいなと思います!
私たち障がい者が、自分の声や体で世の中に発信していくことには大きな意味があります。きちんとした勉強をして、経験を積んで広い視野・広い価値観を持って、客観的にいろいろなことを見つめられるリーダーを、社会にたくさん育ててほしいと思っています。
私自身もダスキン愛の輪基金の「障害者リーダー育成海外研修派遣事業」実行委員として、未来の活躍を思い描いて海外研修を志す人をしっかり見つけて送り出していきたいです。